「俳句」の記事一覧

 塩化ビニル 指は三つ編みを続ける立夏かな 背泳ぎのはじめ人体畳まれて 万緑の中や閉ぢたるリカの口 ソーダ水あやふやに立つ電波塔 目高の群ひるがへりをり糞もまた 誰も右前方を向く揚花火 蛇衣を脱ぐ年表に火の付いて 総身の軟らかくなる劫暑かな 熱…

みんなゐなくなる花の兄はじめに見つけたのは我諫言の声うつくしや蝶の昼青年と翁春星呑ませ合ふ満身創痍炎帝が噴き出してゐる風死してふしあはせなからだふたつ夏雲の話をしてゐた　別の自白するまで食べさせる葡萄かな龍潜む淵にひそひそ酒こぼす手紙から…

だけど川はタワーから眺むるタワー春惜しむ語尾かすか両手に花屑の冷えて猫の恋路地に銭湯にほふなりまなうらを紫雲英あふるや膝つけば遠蛙ずつと飲みくだせない種たましひはみな春眠の橋のうへ誰の特別にもなれずひこばゆる花虻や薄き膜張るみづたまり春愁…