かく・きく
梅一輪落ちて淀みを私す
ふらここのよぢれて戻らない鎖
作業着に血液型を書く四月
春はあけぼのボールペンシャープペン
満天星の花等しくは愛されぬ
絵本から羽ばたく音のする午睡
白繭のわづかな重さおそろしく
あぢさゐや曲線多き試し書き
野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ
北海道と書いて冷蔵庫に入れて
花石榴注射の前の脱脂綿¨C13C手の甲のつめたしさうめんと書けば¨C14C背泳ぎのはじめ人体畳まれて¨C15C日盛りやぽつりぽつりと豚の乳¨C16C遠雷や波に鱗の逆らはず¨C17C初秋の砂すべり来る滑り台¨C18Cあふむけにこはれロボット秋の昼¨C19C順番にゐなくなる家蚯蚓鳴く¨C20C少しだけ小鳥の喋る真昼かな¨C21C夢殿をひとまはりして蛇穴に¨C22C口中でらくくわせいと音鳴れり¨C23C無花果や背中で留めるワンピース¨C24C秋深し泡吐きながら溶けるバブ¨C25Cゴールした人に林檎を渡す役¨C26C落葉満つ縦笛の子の双眸に¨C27C海鼠腸といふ動く水啜りをり¨C28C硬きグミやはらかきグミ冬の山¨C29C作業着を振りて寒靄落としけり¨C30Cくちづけて山河の匂ふ雪女郎¨C31Cかうかうと鶴の渇いてをりにけり