「作品」の記事一覧

【俳句連作30句】かく・きく
かく・きく梅一輪落ちて淀みを私すふらここのよぢれて戻らない鎖作業着に血液型を書く四月春はあけぼのボールペンシャープペン満天星の花等しくは愛されぬ絵本から羽ばたく音のする午睡白繭のわづかな重さおそろしくあぢさゐや曲線多き試し書き野茨が視覚を…
【短歌30首】生きてゆこうね
生きてゆこうね太陽の顔に似ている拗ねた頬おいで一緒に映画を見よう自転車を静かに濡らす雨のようでしたあなたの零す米粒紙ナプキン丸めて突っ込まれているおそらく牛丼を食べた器ああそうだよ運動会やりたかったし俺が念じて雨を止ませた秋の雨長くて起承…
【俳句連作15句】傾いて点く
傾いて点く噴水の果ててこれより夜となる提灯の傾いて点く夏の暮ラーメンの伸び膨らむや遠花火誘蛾灯踊つてゐるときはひとり蟻地獄ゆくらゆくらと母眠る町に煙突卓上に香水瓶秋ちかし始発電車の音だらうペットボトル外階段に沿ひ溽暑網戸破れてカーテンの奥…
【俳句連作20句】ぐるり
ぐるりいづこより迷ひ来た麦かと思ふ野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ蛇動きけり水の中蓮の中萍の犇めき合ひて微動して白繭のわづかな重さおそろしく夏帽子から夏の日の匂ふなりたとふれば夏野に拾ふ首飾り毛虫焼くゐたかもしれぬ姉のため硬き草連なりてをり夏…
【川柳16句】ムーンライト
ムーンライトサファイヤかアームカバーか選びなさい寂しさが集まりすぎている岬メビウスのねばねばとして左の輪右心房だけが世界と揉めている骨箱にミートボールのぎっしりと生意気なコップだ水を入れてやるハンカチが鳩になるまで待っている月光に晒されて…
【短歌28首】誰だったっけ
誰だったっけ カーテンの重なる箇所がゆれている再び肉を凍らせねむる 新聞紙ほそくこまかく八月に生まれた君へ降らせる雪だ どうしようミロに注ぐミルクがないわたしはつよい子にはなれない みずたまりみたいに消えた猫がいてでもカメラには写る気がする ピ…
【俳句連作5句】エレクトリックドルフィン
エレクトリックドルフィン長き夜水槽の灯の明滅す水澄んで鉄琴の音空のぼる三日月の端が紅茶に溶けてゐる少し遅れて白桃のひかりだす話しながら眠らう銀河もう落ちる 近藤花ちゃんの新曲「エレクトリックドルフィン」が好きすぎたのでつくりました。 ポップ…
【俳句連作50句】塩化ビニル
 塩化ビニル 指は三つ編みを続ける立夏かな 背泳ぎのはじめ人体畳まれて 万緑の中や閉ぢたるリカの口 ソーダ水あやふやに立つ電波塔 目高の群ひるがへりをり糞もまた 誰も右前方を向く揚花火 蛇衣を脱ぐ年表に火の付いて 総身の軟らかくなる劫暑かな 熱…
【俳句連作10句】みんなゐなくなる
みんなゐなくなる花の兄はじめに見つけたのは我諫言の声うつくしや蝶の昼青年と翁春星呑ませ合ふ満身創痍炎帝が噴き出してゐる風死してふしあはせなからだふたつ夏雲の話をしてゐた 別の自白するまで食べさせる葡萄かな龍潜む淵にひそひそ酒こぼす手紙から…
【俳句連作15句】だけど川は
だけど川はタワーから眺むるタワー春惜しむ語尾かすか両手に花屑の冷えて猫の恋路地に銭湯にほふなりまなうらを紫雲英あふるや膝つけば遠蛙ずつと飲みくだせない種たましひはみな春眠の橋のうへ誰の特別にもなれずひこばゆる花虻や薄き膜張るみづたまり春愁…