傾いて点く
噴水の果ててこれより夜となる
提灯の傾いて点く夏の暮
ラーメンの伸び膨らむや遠花火
誘蛾灯踊つてゐるときはひとり
蟻地獄ゆくらゆくらと母眠る
町に煙突卓上に香水瓶
秋ちかし始発電車の音だらう
ペットボトル外階段に沿ひ溽暑
網戸破れてカーテンの奥にゐて
座したまま西日の国の長となる
サンドレス・ショーツ擦れ合ひつつ干され¨C13C金魚屋を父だと思ふ午の雨¨C14Cいちにちを玻璃に触れたる土用かな¨C15C置いてゆくものを数へて夏館¨C16C枯れぬまま乾いてゐたり水中花

第41回星雲賞(紫結社賞)応募作品