あいまい

春や春クリームぴゆと出ぴゆと戻り
踊り子の臼歯の見えて芽吹きけり
春嶺やためらふごとく小舟出て
嫩草の絵双紙に人迷ふなり
四十より先あいまいに青き踏む
おほかたは軽トラ白し竹の秋
撮られをり葉柳の端かろく持ち
案内の終はりて庭へ日傘散
糸長く垂れてゐるなり夏の川
縮みつつ伸びつつ薔薇を写したり
噴水の一縷ひとしほ猛りけり
ほとばしる未央柳もその影も
すなほな樹多くて夏のみづうみよ
夏帯のなにもかもさびしき絵なり
公民館出づる総身へ蟬時雨
水無月や尖りを下に卵しまふ
柄に柄合はせて楽し南風
月涼しバレエシューズの紐交差
黒髭のいまだ跳ばざる網戸かな
短夜や極光色の飴舐めて

第26回炎環賞 応募作品20句 (最終候補作品)