【俳句・三句】
流されて雛体温を失ひぬ
蛭のゐる淀みじつくり乾きけり
真鰯は光の束や切り開く
【短歌・三首】
陽に濡れて女が二人もたれ合う生活福祉一課のベンチ
「ありがとう」と言われ続けた生水を飲んだら春の海ばかやろう
Hey Siri 今日は何人救ったの 卵白絶え間なく泡立てる
【自由詩】
おとといの回鍋肉がいつまでもにおい続ける 1LDKで
トートバッグをまさぐれば指先にたれ瓶
たれ瓶は魚を模して 仁丹がきしきし詰まっている
市役所の第二庁舎に行く日はいつも下腹部がとげめく
昼 長時間 ガラスでできたドア
を開ければひかりが周回する
控え用紙は十一月の薄さ
をたためば 重い
ありがとう
あてがう
魚の胴を圧しつぶす
こっ とん たん ぽん ちち ちち ち ち
銀の粒を吐く とめどなく
かえれない
卵を上と下の歯で挟むと
顎の奥で火花が発/滅した
ららららららら らららら
嗽口 排水
にくたいの気配のするシンクに
泡と火のかけらがかがやき
合う
剥 離