ぐるり
いづこより迷ひ来た麦かと思ふ
野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ
蛇動きけり水の中蓮の中
萍の犇めき合ひて微動して
白繭のわづかな重さおそろしく
夏帽子から夏の日の匂ふなり
たとふれば夏野に拾ふ首飾り
毛虫焼くゐたかもしれぬ姉のため
硬き草連なりてをり夏の風邪
青葉靴乾いた音を立て止まる
夏雲のいま木を人を追ひ越して¨C14C葉を虫は食み進めたり日の盛¨C15Cほそく息吐けばつめたき青田かな¨C16C緑蔭や平行四辺形に家¨C17Cががんぼと呼んでやうやく結像す¨C18C土手に日の名残ただよふみづあふひ¨C19C七月や川面に膜のひび割れて¨C20C空蟬を包みて歪む暮色かな¨C21C河原風その延長の揚花火¨C22C箱釣やみなくらがりを随へて¨C23C
第23回炎環賞 応募作品20句